にこにこ通信 95号 ~繋がりがつむぐあたたかな日常~

 厳しい冬の寒さを乗り越え、今年も美しい梅や桜の咲く季節が近づいてきました。昨年からにこにこをご利用されている利用者さん達も、すっかり顔なじみとなり、時にはスタッフと冗談を交えながら、気軽に会話のできる関係が生まれつつあります。そんなスタッフと利用者さんの関係のように、利用者さん同士の関係もまた、日々変化しています。
 タカシさんは、半身麻痺のため普段は車椅子を使用されており、失語症で言葉を発するのが難しく、スタッフの言葉に対して頷いたり首を振ったりして自分の意思を伝えられることが多いです。そんなタカシさんの様子を、いつも向かいの席から気にかけてくださっているトシさんは、タカシさんが車椅子に座ってモゾモゾされているのを見ると、近くにいたスタッフに「暑いみたいやから、上着脱ぐの手伝ったって」と声をかけてくださいました。また、タカシさんがタブレットの操作に困っていると、トシさんが代わりにボタンを押そうとしてくださり、私が「タカシさんが困っていたらお願いしますね」と言うと、笑顔で応じてくださいました。ある朝、トシさんとタカシさんに、私が「今日は何日でしたか?」と尋ねると、すぐにタカシさんの方からはっきりと「4日」と答えが返ってきました。それを聞いたトシさんは、「はっきり喋れるようになったなぁ」ととても嬉しそうにされ、見ているこちらまで嬉しい気持ちになりました。
 タカさんは、自分の弟に似ているためか、自閉症を持つショウちゃんに対してとても優しく言葉掛けをしてくださいます。手を繋いで一緒に散歩へ行くときには、「ゆっくりでええからな」「もうちょっとやで」と、ショウちゃんの様子を見ながら何度も励ましの言葉をかけていました。小学生の子ども達に対しても、以前は「うるさいからいらん。一緒に遊ばへん」と言っていたのに、最近では一緒にカルタ取りに参加し、自分が取ったカードを子ども達に渡してあげていました。
 そして、にこにこではすっかりお馴染みとなったヒロさんとアユくんのコンビは、今も変わらず仲良しです。みんなでおやつを食べに外出した先で、アユくんが買ったおやつのプリンをヒロさんが食べたそうに見ていると、アユくんはヒロさんのスプーンを使ってプリンをすくい、ヒロさんに食べさせてあげました。他にも、ヒロさんの使うタブレットの準備のお手伝いをしたり、車に乗っている時にはヒロさんの手を握り、ヒロさんがアユくんに呼びかけるような声を出すと笑って応えてあげたりと、アユくんはヒロさんの事をとても気にかけてくれています。
 人と人との繋がりは、時に私たちが想像する以上に良い結果をもたらします。更に利用者さん同士が良好な関係を築けるよう、これからも支援を続けていきたいと思います。