にこにこ通信 140新年号

 新年あけましておめでとうございます。新年を迎えれば、何かしらおめでたい気分になり、今年も頑張ろうという雰囲気になるものですが、今年の新年はいつもとは違います。新型コロナウイルス感染症の終息は見えず、飲食店への出入りの制限や3密回避、日常的にはマスクの着用、手洗いとうがい、アルコール消毒といった今までにない新たな日常を送らねばならない事態が続いています。一昨年の中国武漢発の新型ウイルスが、これほどまでに猛威をふるうとは、誰が予想できたでしょうか。東京オリンピック・パラリンピックは延期となり、コロナ不況による倒産と廃業は多くの失業者を生んでいます。また、予想できない事と言えば、昨年も国内では熊本県で記録的な大雨が降り、清流で有名な球磨川が氾濫して甚大な被害が発生しました。世界でも経験したことのない暑さや大雨が相次いでいますが、新型コロナウイルスの世界的な大流行と異常気象、表面的には違った現象ですが、根っこのところでは、気候変動と地球温暖化という背景が共通してあるのではないかと思います。

 そうした意味から、パリ協定から離脱し地球温暖化対策には消極的であった米国のトランプ氏が大統領選にやぶれ、新しくバイデン氏が米国大統領に選ばれ、黒人でアジア系アメリカ人のカマラ・ハリス氏が女性初の副大統領に就任することは、新しい歴史が生まれていくような期待を抱かせてくれます。

 そんな社会状況でしたが、デイサービスセンターにこにこを利用されている皆さんは、昨年も元気いっぱいに日常生活を送ることができました。特に、緊急事態宣言が出されて学校が休校となり、自粛生活を強いられていた4月5月頃、障がいがある子どもの放課後デイサービスの活動拠点である菟田野児童館は、子どもたちの元気な姿があふれていました。子どもたちは、天気の良い日は閑散とした近くの児童公園へ行って、思いっきり太陽を浴びて走りまわっていました。でも、他の子どもたちの遊ぶ姿のない児童公園には違和感を感じました。子どもたちはどこへ行ったのでしょうか。学童保育で過ごしたり、親と一緒に自宅で過ごした子どもたちもいたと思いますが、とにかく地域で他の子どもの姿を見かけることはありませんでした。デイにこにこを利用している子どもたちには、知的障がい、自閉症、発達障がい等様々な障がいがあります。発達障がいでも、自閉スペクトラム症、学習障がい、ADHDと様々な特性を持っています。遊び方にも違いがありますが、時には皆で一緒になって一つの目標にむかって共同作業をする事もあります。でも、好きな物はバラバラです。

 昨年の4月、大量に焼き芋を焼くことができる道具を作ろうということになり、ドラム缶を準備して、簡単な図面を近くの鉄工所に持ち込み、焼き芋とピザを焼く道具を作ってくれるように頼みました。気持ちよく了解していただき、こちらの図面に改良を加えた道具を作ってくださいました。この道具は、コロナ禍のなかで焼き芋を焼いたり、ピザを焼いたりするのに大活躍をしました。子どもたちがトッピングした具材をピザにのせ、炭火でじっくりピザを焼きます。炭をおこすのも、うちわであおいで手伝ってくれました。じっくりと炭火で焼いたピザや焼き芋はなかなかの味で好評でした。自粛生活が続き、近くの公園以外に外出する機会がなかった頃、ドラム缶製の「焼き焼き道具」は大活躍でした。

 コロナ禍のなかで、国内においても、世界の国と国との間においても、格差は広がっています。天井がなく、底が抜けたような時代ですが、そんな時代だからこそ人と人とのつながりは大切にしなければなりません。

 昨年の11月から、デイにこにこでは月に2回焼き芋と野菜の販売をしています。昨年はサツマイモの畑に猪に入られて散々な目にあいましたが、残った芋での焼き芋の味は上々でした。売り手として、ヒロ君も頑張ってくれ、お客さんにニコニコ笑って愛想をふりまいてくれています。彼は特に何かできるわけではありませんが、それが彼の役割です。

 デイサービスセンターにこにこは、地域のつながりを大切にし、常に生活に困難を抱える人たちとともに、その人たちの夢と希望を実現できるよう、今年も伴走していきたいと思っています。