にこにこ通信 186号 ~苦労の甲斐があって、おいしいおやつに…~

 9月になっても夏のような暑さが続き、今年は秋が来ないのかと思っていましたが、10月になるとキンモクセイの香りがただよってきて、デイサービスセンターにこにこがある宇陀は、気持ちの良い日々がつづいています。異常気象といわれて久しいですが、季節は確実に巡っているのだと実感しています。

 生活介護を利用されているトシさんの近頃の楽しみは、おやつ作りです。もともと食べることが大好きなトシさんですが、特にスイーツには興味があります。毎週土曜日にいろいろなお菓子を手作りしています。

 スーパーマーケットに行くと、さまざまなお菓子が簡単にできるミックスの箱があり、最初は杏仁豆腐のミックスを使いました。

 トシさんは普段、歩行器を使って移動されています。腕で支えて立っているので、立ちながら手を使って作業することは無理なので、キッチンの流し台のところにイスを持って行って、トシさんの座る場所を確保することから始めました。ボウルにミックスの粉と牛乳を入れてよくかき混ぜます。

 「ここでよく混ぜてください。ダマにならないようにお願いしますね」とスタッフが声をかけると、「大丈夫ですよ。腕の力には自信があります。いつも鍛えているようなもんですから」と返事されました。なるほど日頃、歩行器を使っているということは、腕で全体重を支えているわけなので、力強くなるはずです。

 トシさんは、膝に置いたボウルを左手で支えて右手で泡だて器を持ち、素早く力強く動かしてすぐにきれいに混ぜられました。次に鍋に移して火にかけるのですが、椅子に腰掛けたままではコンロでの作業ができないので、片手で体を支えてもう片方の手で竹べらを持って、「弱火で沸騰するまでなめらかになるようにかき混ぜます」と箱に書いてある作り方を読み上げるスタッフの声に従って、がんばりましたが、沸騰してきて、火からおろして型に入れて冷やす段階になると、トシさんは「疲れてきました」と椅子に座り込んでしまわれました。

 そこで、トシさんの作業はそこまでにしてスタッフが型に入れて冷やすという残りの作業をしました。普段、わたしたちが何気なくやっている台所作業もトシさんにとっては、けっこう大変な作業なのだということを改めて感じさせられた時間でした。

 3時のおやつの時間に「固まっていますかねえ」と、ちょっとドキドキしながら冷蔵庫から出すと、真っ白にきれいに固まったプルンプルンの杏仁豆腐が出来上がっていました。水にいれて戻してあったクコの実をかざって、写真を撮りました。

 次からは、ミックスを使ったプリン、ゼラチンパウダーを使ったコーヒーゼリーや黒糖ゼリーを作りました。

 「そろそろ寒くなって来たので、あたたかいぜんざいも作りたいですね」と話しています。トシさんが、自分で作ったという達成感を持てますように、おいしいおやつができますように。