にこにこ通信 188新年号

 2024年は、能登半島地域を襲った大地震とともに年明けを迎えました。M7.6で最大震度は7を記録し、家屋の倒壊や津波により227人の方が犠牲となっており、過疎化と高齢化の進行という地域のなかで、地震発生後の災害関連死は235人(11月22日現在)になり、地震発生時の直接死を超えています。被災者が雑魚寝を強いられたり、トイレの衛生環境や入浴設備等が不十分な避難所もあり、長期にわたる生活で体を壊して死に至る高齢者の現実があります。仮設住宅に移り、少しずつ日常をとりもどしつつある被災者に、9月21日に豪雨が襲いました。輪島市では24時間で400ミリを超える雨が降り、川の氾濫により,多くの仮設住宅が床上浸水になり、再被災で「元旦に戻った」との嘆きの声が聞こえてきます。

 今、奥能登地域は厳しい冬を迎えていますが、地震大国のわが国で、気候変動による異常気象が日常化するなかで、奥能登地域の災害は多くの教訓を教えています。

 今年は、「阪神・淡路大震災」から30年にあたります。震災発生直後、部落解放同盟奈良県連合会の一員として、神戸市内の避難所に水や毛布や衣類、食料等の救援物資を届けました。被災地に入るとそれまでの景色は一変し、まったく異なる世界が広がっていました。火災が発生した場所からは煙が上がっており、自衛隊員がトビのような長い棒を持って巡回していました。避難所になっていた小学校の体育館は人であふれ、避難所の秩序は守られていたものの、トイレは使える状態ではありませんでした。

 あれから30年、「阪神・淡路大震災」がボランティア元年といわれるように、今日では災害の現場にはボランティアの姿があります。能登半島地震でも全国から多数のボランティアが集まり、現地に拠点を置き、建設重機を持ち込んで活動しているボランティア団体もあります。自分で被災地までの交通費や宿泊費を出して宿泊場所も確保し、人の役に立つことが金銭では買えない充実感や達成感を得るのだと思います。ボランティア活動の広がりに比べて、避難所での生活は30年経っても大きな改善はみられていません。

 内閣府は、能登半島地震で避難所の生活環境が不十分だったのをふまえ、先頃、避難所運営に関する自治体向けの指針を改定しました。国際赤十字などが策定し、諸外国では避難所運営に活用されてきたソフィア基準を盛り込んだものです。トイレ、食事、生活環境、生活用水について見直し、「20人に一つのトイレ」「50人に1か所の入浴施設」「最低3.5平方メートルの居住スペース」の確保を求めています。このほか、トイレカーの確保、キッチンカーやセントラルキッチン方式等を活用した暖かい食事の確保、段ボールベッドなどの簡易ベッドや入浴施設(シャワーや仮設風呂)のための資機材の備蓄促進などを盛り込んだものです。

 我が国と同じように地震大国イタリアでは、避難所ですでに取り組まれている事です。避難所で性暴力をおこさない工夫や障がいをもつ人が快適に暮らせる工夫がされており、被災者がストレスをためないよう、遊び場も作られています。被災者に我慢を強いる我が国の災害対策とは大違いです。

 9月に南海トラフ大地震の「臨時情報」が出された時、西日本では少なからず混乱が起こりました。和歌山の海水浴場が閉鎖され、新幹線が減速運転をおこない、何よりも驚いたのは、お店からペットボトルの水がなくなったことです。

 今、私たち福祉の事業者に感染症の拡大や大地震や風水害等の自然災害の中でも事業を継続するための事業継続計画(BCP)の策定が求められています。私たちは、水や食料品、簡易トイレ等の備蓄を始めているところですが、デイにこにこの利用者さんは、災害の発生と避難所での生活という非日常的な出来事に対応できない人ばかりです。グループホームやデイサービスで利用者さんの避難生活がおくれるよう準備しています。

 さまざまな困難がある人のことを地域の人たちに知ってもらえるよう、公園の清掃活動や地域のクリーンキャンペーンにも参加しています。毎週水曜日に児童館で販売している焼き芋も、障がいのある人の特性を知ってもらうことも目的にしていますし、さつま芋を焼く窯と炭は非常時にはドライフーズを暖かい食品にしたり、干物をあたためたり、焼いたりする道具にもなります。

 過去の大地震の周期から見て南海トラフ大地震は、近い将来必ず発生するといわれています。災害への備えは、日頃から地域で顔が見える関係づくりが必要です。八木一男福祉会は、そんな地域での関係づくりを目指して今年も頑張っていきたいと思います。