夢を結い 夢にはばたく -にこにこ通信25-
「夢を結い 夢にはばたく――み~んな一緒に ぼちぼちいこか」と題する「日本ダウン症協会全国大会in大阪」(7月24,25日開催)に参加しました。
ほんわかした雰囲気に包まれた会場で語られた「ダウン症をもつ人の就労と自立に向けて」という実践報告は、当事者や保護者の方の「働くことをあきらめない」という熱い思いに満ちていました。
知的しょうがいのある方が、介護ヘルパー2級資格を取得して、介護現場で60名以上の方が就労している(大阪府)という事実を今回初めて知りました。
ヘルパー資格をお持ちの方は、よくご存じと思いますが、ヘルパー2級資格を取得するには、講義と実習をあわせて130時間の講習を受け、レポートを提出するなど、心身ともにかなりのエネルギーを要する勉強です。
大阪では、全国に先駆けて大阪市職業指導センターで、知的しょうがいがある人の介護ホームヘルパー2級養成講座(講習時間は420時間・テキストは総ルビ・イラスト入り・受講料無料)が開設され、今年で6年目を迎え、60名以上の方が修了し、福祉、介護現場で働いているとのことでした。
実践報告をされた江口敬一さんの息子・裕介さんは、28歳になり、デイサービスセンターに就職して、10年経つということでした。裕介さんがかつて書いたという作文が紹介されました。
――ぼくは、老人デイサービスセンター「アンデスのトマト」で働いています。仕事の時間は、8時半から4時半です。朝は、7時10分ごろ家をでます。仕事の内容は、おふろそうじ、まどそうじ、床そうじ、トイレそうじ、利用者の人にお茶とおしぼりとおかしをだします。昼食の用意をしてくばります。利用者の名前は、おぼえました。午後からレクリエーションのおてつだいをします。利用者の人とおしゃべりしたり声かけします。そうじがすきなのでそうじをしている時が楽しいです。仕事が終わっておやつを食べながら日誌を書きます。センター長や主任や職員の人といろいろ話します。おやつおいしいです。利用者の人と阪神タイガースの話をします。ぼくは、阪神ファンです。(中略)ぼくの夢は、結婚したいと思っています。やさしい人がいいです。いっしょうけんめいお仕事をして給料をもらってがんばります。だれかぼくに、やさしい人をおしえてください。――
江口さん夫妻は、裕介さんが生まれ、障害があると知ったとき、話し合って三つの約束をしたそうです。「障害があることを隠さない」「人の気持ちのわかる、思いやりのある子に育てよう」「支援を受けながら普通の子として育てたい」――しょうがいのためにできないことはいっぱいあるが、働くことをあきらめずに、親子で周囲の支援を受けながら、努力を重ねてこられた様子を語られました。
最後に、父親の出番として、しょうがいのある人が働く特例子会社の設立を会社に提案し、
YKK六甲株式会社を立ち上げ、代表取締役に就任され、昨年10周年を迎えたことを付け加えられました。自閉症を含む14名のしょうがいのある社員が、YKK社商品の取扱説明書を印刷する仕事をしているということでした。
しょうがいのある人が、自分の意思で人生の設計を描けるような夢のある会社を目指したい、と締めくくられた報告は、とても説得力があり、会場は大きな共感に包まれていました。
“ないものは、みんなでつくっていこう”会場で何度も繰り返された言葉です。
現場での実践はとても困難ですが、とてもわかりやすく、勇気がわいてくる言葉です。
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