にこにこ通信 27号
介護の仕事は、3Kとよく言われます。
一般的には、きつい、汚い、危険な仕事とされ、慢性的な人手不足が続いていますが、じつは介護の3Kは、①感動、②健康、③工夫だと、かつて講演会で聞いたとき、なるほど!と目からウロコでした。
① の感動とは、介護の仕事に従事するなかで、数々の感動の場面があるが、それを感じる心が大切だということ。
②の健康とは、介護の仕事は、とにかくよく動く、何度もトイレに行く認知症の方の見守りや徘徊に付き添うことによって一日一万歩などかるく歩く。そのことによって、健康になるということ。
③ の工夫とは、介護の仕事は、利用者さん一人ひとりに、この方には何ができるだろうか、何がお好きだろうか? どんな役割をしていただこうか?どうやって食事を摂っていただこうか? などと日々試行錯誤や工夫をしながら実践している。――といった内容のお話でした。
にこにこの日常のなかでも、たくさんの感動の場面に出会います。
わすれられないシーンの一つを紹介します。
ゆきさんは、若年性アルツハイマーと診断されて10年以上が経過し、ご自宅でもトイレの場所がわからないなど認知症が進行し、家族の方も介護疲れが重なり、にこにこのご利用をはじめられました。
もともと明るく、几帳面でしっかりとした性格の方で、にこにこでも昼食の準備やタオルたたみなど、労を惜しまず手伝ってくださいますが、お家の事情でしばらくお休みをされました。
数か月振りに来られたとき、ゆきさんは「ここに来るのが、いちばんうれしいわ」とおっしゃって、スタッフは少し驚きました。にこにこをしっかりと覚えていてくださったということが驚きであり、喜びでした。
ちょうどお誕生月だったので、その日に合わせてお誕生日のお祝いをしました。
いつものように、ケーキを買って、写真とメッセージ入りの手作りのカードを準備し、皆で「ハッピバースデー、ツーユー、ハッピバースデー、ツーユー、ハッピバースデー、ディア ゆきさん ハッピバースデー、ツーユー」と歌った直後、ゆきさんが涙ぐんで「こんな風に、祝って下さってありがとう、ほんとにありがとう……」とおっしゃいました。
それを見ていた、通称「ケタケタおばさん」(一日のほとんどをケタケタと笑っておられるので、最近新しくにこにこに来られたヒロシさんが名づけられました)のヨシさんが、もらい泣きし、ヨシさんを見た、善さんが、こっそり涙をぬぐうということがありました。
その場に居合わせた、利用者さん、スタッフ全員の心が、ふんわりと温かいもので、満たされました。
ゆきさん、ヨシさんは、5分前の直前記憶がないほどの認知症の方ですが、感情は、ほんとうにいきいきと豊かに表現されるということを、感動しながらあらためて実感したある日の出来事でした。
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