にこにこ通信 44号

 最近になって、孤立死が新たな社会問題となっています。「誰にも看取られることなく息を引き取り、相当期間が経ってから発見される」という高齢者の孤立死は、高度経済成長と核家族化の進行した1970年頃より社会問題となってきましたが、昨年から今年にかけて相次いで発見されたケースは、今までの孤立死とは少し様相が違っています。
 昨年12月には横浜市で、当時77歳の母親が44歳の重度の障がいを抱える息子と一緒に自宅で病死しているのが発見され、今年3月には東京都立川市の都営アパートで、死後1か月経った当時95歳の認知症の母親と介護していた66歳の娘が病死しているのが、発見されました。二つの事例に示されているように、最近になって相次いで発見された孤立死は、元気な母親や娘に介護され、地域で生活をしていた高齢者や障がい者が、介護をしていた家族が病死した後、支えを失って命を落とすといったケースで、今までの一人暮らしの高齢者の孤立死とは違っています。
 以前、自閉症の息子さんをもつお母さんからこんな話を聞いたことがあります。「自分の息子は、普段は学校(特別支援学校)への行き帰り以外に外へ出ることはなく、地域とのつながりはほとんどありません。地震や台風等、大きな災害が起こったら、何をしたらいいのか、どこに逃げたらいいのか等、一人ではどうすることもできません。そんな息子のことを地域でどれだけの人が知っていてくれているのかを考えると、とても不安です」と。
 少子高齢化と小規模家族の増加ともあいまって、社会的な孤立は増加しており、家の中で起きていることが周囲には全く気づかれず、生活に様々な困難を抱えた家族が家族ごと地域から孤立してしまっていることが、孤立死が増加している背景にあります。
 孤立死を生まないためには、地域のつながりや見守りが必要です。デイサービスセンターにこにこの利用者さんのなかには、家族ごと地域で孤立状態にある人はおられませんが、私たちが住んでいる地域でも、地域とのつながりが薄れてきている方が増えています。 
 孤立死対策として、民生委員の訪問活動を強化したり、住民のボランティアを組織して見守り活動を行っている地域も増えてきていますが、「あそこの家には介護する人がいるから」と言って認知症の高齢者や障がい者がいる家族からのSOSが見過ごされてしまっていることがあります。孤立死を防ぐためには、その家のちょっとした変化でもSOSとして受け止め、地域住民がおせっかいをやいて、時には家の中に踏み込んでいくことも必要です。
 デイサービスセンターにこにこでは、一人の孤立死も生まない地域をつくるため、地域包括支援センターや自治会、民生委員とも連携しながら地域の見守り活動にも力を入れていきたいと思っています。