にこにこ通信 48号

 今年の夏休みも、障がいをもつ児童の夏休みの居場所づくり事業、「にこにこの部屋」を行いました。旧菟田野町の時にスタートして、この事業も今年で9年目を迎えます。
 今年は、11人の児童が利用し9時から夕方の4時30分まで、菟田野人権交流センターで元気に過ごしました。
 今では、障がいをもつ児童の休日や放課後の支援策として、児童福祉法により放課後等デイサービスという事業が制度化されていますが、「にこにこの部屋」を始めたころは利用できる制度がありませんでした。休日や放課後、特に夏休み等は子どもの居場所をつくってほしい、というのが親の大きな願いでした。
 現在、宇陀市で実施されているのは、放課後等デイサービスの利用日数の不足を補うもので、7月と8月で10日ずつ利用できます。これによって子どもたちは、夏休みの間希望する事業所で指導員さんのもとで安全に一日を過ごすことができます。
 宇陀市も財政難で事業の縮小がすすめられていますが、なんとかこの事業だけは今日まで削減されずにきました。
 今年の「にこにこの部屋」の活動ですが、年齢も子どもたちの障がいの特性も実に様々な小学生4人、中学生2人、高校生5人が利用しました。常に動きまわる子、音刺激・感覚刺激を求めて物を投げてはそれが床に落ちる音で気持ちを高めていく子、外に飛び出して砂利で足の裏の感覚を刺激するのが好きな子、放っておいたら一日中でも座り続けて体を前後にゆすり続ける子など。
また、さまざまなこだわりも持っています。その日、はじめて入った部屋の状態が維持されないと機嫌が悪くなってしまう子、車のハンドルを持つ手が10時10分の位置でないとハンドルに手をのばしてくる子など。
 私たちは、こうした特性やこだわりが少しでもなくなっていくように支援していますが、強制的にしてもなくなるものではありません。人間は本来、様々な個性をもっていますが、今の時代、個性を発揮するより協調性や同調性が求められることが多くあります。そのため、ストレスをため込んで病気になってしまったり、うっ積する不満を自分より弱い者へのいじめという行為にはしってしまったりすることがあるのではないかと思います。
 「にこにこの部屋」では、夏休み期間中どんどん外へお出かけしました。ファストフードのお店に行って、おやつをよく食べました。橿原のアルルでおやつを食べていた時、ヒロ君は「ワー」という大声で叫び続けました。ヒロ君は、普段はにこにこして初めての人でも自分のそばに寄せてしまうふしぎな力をもっていますが、気にいらないことが続いたりすると大声を出します。頭ごなしにおこっても収まるものではありません。彼の気持ちを落ち着かせるために、歌を歌ったり話しかけたりしながら彼に接します。また、ヒー君はソフトクリームを食べるとき、コーンから食べるのでアイスクリームが溶けるのと食べるのとの競争です。
 周囲の人から見ると、変わった子どもたちと見られているかもしれませんが、私たちは、変わった子という見方が個性的で面白い子どもたちという見方に変わっていくように、これからも人も集まる場所に出向いていきたいと考えています。