にこにこ通信 51新年号
デイサービスセンターにこにこを設立して5年が経ちました。
設立5周年を記念して、昨年10月に5年の歩みを振り返るために写真展を行いました。
そこには、元気だった頃のカズ子さんやアサ子さんが写っています。カズ子さんやアサ子さんは、設立以来の利用者さんで、歌の好きなお二人はよくカラオケを唄っておられました。カズ子さんは、認知症がすすみ、今では歌を歌うどころか、にこにこではうとうととされる時間が長くなっています。食事もミキサーでつぶしたご飯やトロミを付けたおかずを食べるのが精一杯です。にこにこでは、カズ子さんが眠らないように職員がそばに寄り添って声掛けをするようにしていますが、最近になって新しい助っ人が登場しました。ダウン症という障がいがあるショウちゃんです。ショウちゃんは、常に愛用のグッズを目の前においてにこにこ特製の懐かしのアニメ特集のCDに合わせて歌っています。部屋では、カズ子さんの横がショウちゃんのお気に入りの席で、そこで大きな声で歌うものですから、カズ子さんは眠ってられません。たまにカズ子さんは、ショウちゃんをにらみつけますが、ショウちゃんはおかまいなしで歌い続けています。職員の言葉かけより、ショウちゃんの歌の方がカズ子さんにとっては、心に響くのかもしれません。
ショウちゃんは、声掛けをしてから行動に移すまでに時間がかかりますが、食べることが大好きで、目を離すと他人の分まで素早く取ってしまうという「はやわざ」を持っています。こだわりも強く、部屋の状態が今までと変わっていると元に戻そうとする子です。
また、この5年の間には、残念なお別れもありました。ゼンさんとサチ子さんは入所施設に移られました。造園業をされていたゼンさんは将棋が好きで、山野草や樹木、宇陀の歴史と文化のことをよく教えてくださいました。家には立派なオオヤマレンゲの木と椿、井戸の周りにはわさびが生えていました。宇陀市内でもわさびが生えている所はなかなか見つけることはできません。家の井戸の周辺に生えていることは、井戸の水がきれいな証拠で、ゼンさんの自慢でした。
にこにこで高齢者の人と出会い、その人の歩んできた歴史やいろいろなことを教えていただきますが、どの人の知識も今まで知らなかったことばかりです。
いまの時代、人から人へ伝承されていくことが少なくなってきていますが、にこにこを設立して利用者さんと一緒に歩んできた5年は、思えば介助を必要とする人に様々なことを教えていただいた5年であったと思います。高齢者からは様々な体験を通して得た知識を教えていただき、障がいをもつ子どもたちからはコミュニケーションのとり方を教えられました。
こうした5年間の経験を踏まえて、今年は新しい事業にチャレンジしていきたいと考えています。
昨年12月の第46回衆議院選挙において、自民党が単独で過半数を獲得し、民主党は政権批判の逆風の中で惨敗しました。民主党政権は、社会保障だけを見ても迷走を重ねた3年間でした。目玉政策だった子ども手当は、結局のところ所得制限のついた児童手当になり、廃止を約束した障害者自立支援法は、「障害者総合支援法」に名前は変わりましたが、廃止にはほど遠いものです。しかし、格差社会が広がる中で、生活困難者への支援策として、パーソナルサポートサービスが動き出したことは、評価できることだと思いますし、次の政権にも引きついで取り組むべき民主党政権の置き土産だと思います。
生活保護受給者は210万人を超え、年収200万円未満のサラリーマンが1000万人を超える今日、地域からのセーフティネットを確立することが求められています。
オリンピックにわいた昨年、世相を表す漢字に「金」が選ばれましたが、お金に縁のうすい人たちがますます増えています。厚生労働省は、生活支援戦略を打ち出し、就労につなげる中間就労と伴走型の支援を示していますが、それにかかわる人材の育成は緊急の課題です。
八木一男福祉会としても、今年は生活困難者の支援にむけて、地域でのセーフティネットを築くための準備を進めていきたいと考えています。
0コメント