にこにこ通信 54号
「医療的ケアを必要とする重症心身障害児を地域で受け入れてくれる事業所をふやしてほしい」――ある保護者の切実な要望です。
医療的ケアに含まれるたんの吸引や経管栄養〈胃ろうからの栄養剤注入〉は、医療行為に該当し、医師法により、医師、看護職員のみが実施可能とされています。在宅や特別支援学校、特別養護老人ホームなどで対象範囲(たんの吸引や経管栄養のどこまでを限度とするか)や要件(本人との同意、医療関係者による的確な医学的管理、医行為の水準の確保など)の取り扱いの内容が異なっていました。
日常生活を営むのに必要な行為であるということから一定の研修の受講等を条件に介護職員にも可能にしてはどうかという議論が数年前からおこり、「社会福祉士及び介護福祉士法」の一部改正案が成立し(2012年4月1日施行)介護福祉士及び一定の研修を受けた介護職員は、一定の条件の下にたんの吸引等の行為を実施できることとなりました。
ただし、たんの吸引や経管栄養は「医行為」と整理されており、現在は一定の条件のもとに実質的違法性阻却論により容認されている状況です。違法な行為であるけれどもやむを得ない行為であり、実質的に違法性が阻却されうるとして運用上の取り扱いで介護職員にも容認されてきたという経緯があります。
デイサービスセンターにこにこの新しい利用者であるアヤさんは、特別支援学校中学部2年生です。お母さんから相談があったのは昨年の11月で、放課後等デイサービスを利用し、経管栄養(胃ろうからの栄養剤注入)等の医療的ケアをしてほしいとの依頼でした。
アヤさんは、両上肢機能障害、移動機能障害があり、介助者なしで過ごすことは困難で、24時間休むことのできない保護者の介護負担の軽減とアヤさんの社会参加の場を広げるためにも、学校以外で医療的ケアのできる日中の居場所を確保することは不可欠でした。
平成24年度の県の研修予定は、7月、10月、1月の年3回となっており、1月の研修にぎりぎり間に合いました。8時間の基本研修と筆記試験(9割正解での合格が必須)、3時間の演習を終えて訪問看護師の指導の下に実地研修を行い、2回連続で評価基準を満たすことが必要です。事業所としても登録特定行為事業者として都道府県に登録するための多数の書類を提出しなければなりません。実地研修は特定の利用者ごとに行う必要があり、ケアの内容や留意事項等も利用者ごとに異なります。
医療的ケアのできる事業所が少ない理由は、上記の内容をすべてクリアしなければならない点、利用者や保護者との信頼関係を築くのに時間がかかる点などがあると思われます。
アヤさんの屈託のない笑顔は、出会った者すべてが笑顔になるというマジックスマイルで、アヤさんの強みのひとつです。アヤさんがデイサービスセンターにこにこを利用するにあたり、県の障害福祉課、担当医、特別支援学校の進路指導の先生、担任の先生、訪問看護ステーションの所長、看護師の方などのご協力や温かいご指導をいただきました。これからも、さまざまな機関や担当の方と連携を深めながら、さらにスキルアップをはかり誰もが笑顔になれる「にこにこ」をめざしたいと思います。
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