にこにこ通信 56号 ~子どもたちの隠れた能力を発見し、本当の「支援」を心がけたい~

 最近、自分の誤りに気付いたことがあります。障がいを持つ子どもたちを支援している時に、「この子はこれができないから」、「この子はこれ以上できないから」と決めつけていたのではないかという誤った思い込みです。
 例えば、ある時、あゆ君にボール遊びは難しいだろうなと思いながら、体育館でバレーボールを入れたかごをあゆ君に預けてみると、ボールをすべて投げ出しました。それで終わりかなと思って見ていると、今度は投げ出したボールをすべて、順に拾いながら上手にかごへ投げ戻し、また投げ出してを繰り返し、次には放り出したボールを拾い集め、遠くにあるバスケットリングに投げ入れたり、高くて幅の狭い棚にトスして載せたりと、大人もびっくりするくらい上手にボールを使って遊んだのです。
 またひろ君は、機械を使うのは無理だろうと思っていたら、テレビゲームの端末の操作を見よう見まねで覚え、そればかりかあちこち触っているうちに、大人が示したことない使い方まで、いつの間にかマスターしているのです。
 私は、気づき反省しました。「目に見える一部の障がいが、その子のすべてではない。その一部分ですべてを決めつけてはいけない」と。
 また、障がいを持つ子どもたちと一年あまり接してきて、最初は気づかなかった能力もいろいろと見えてきました。例えばショウちゃんは、ほとんど言葉は話しません。でも、アニメの曲を聴くのが大好きです。アニメソングのCDをかけると、一日中でも聞いています。ある日、気づいたら、CDに合わせて、端々ですがアニメソングを口ずさんでいたのです。ショウちゃんは、日ごとに口ずさむ部分が増えています。曲数も増えてきています。これからまた、新たに聞かせてくれるレパートリーが楽しみです。
 障がいを持つ子どもたちの多くは、言葉は話さなくとも他人の言葉は理解できます。写真や絵で示せば、具体的なことやより詳細なこともわかってくれます。例えばこうちゃんは、行き先や環境が自分の思わくと合わないとしばしばパニックに陥り、食事や遊びにも集中できなかったり、叫んだり引っかいたりして大変でした。でも、この一年ほどの間に、わかりやすく言葉がけをしたり、次の行動を絵や写真で示したりして促すうちに食事も遊びも落ち着いて楽しめるようになってきました。
 あらためて振り返ってみれば私は、当初、障がい児支援を「見守り」と勘違いしていたのかもしれません。事業所は学校ではありませんが、放課後等デイサービスで障がいを持つ子どもたちを預かる場合、その職務は単なる「見守り」だけではなく、「支援」でなければなりません。安全だけではなく、お互いに楽しみながら子どもたちの隠れた能力を見つけ、さらに発達するような支援を心がけたいと、改めて思います。