にこにこ通信 57号 ~介護タクシーの役割は送迎だけではない~

 八木一男福祉会では、デイサービスだけではなく介護タクシーによる通院などの介助も行っています。
 車いすを使っていらっしゃる方が通院される時、車いすごと乗れる車で病院まで送迎したり、一人では歩きにくい方には付き添って行ったりします。安全に通院するということはもちろんですが、高齢の方で医師との会話がスムーズにいかないという方などに安心して受診していただけるように診察室の中まで付き添うこともあります。
 高齢で今は一人暮らしをされているトヨさんは、2週間に1回のペースで大学病院の複数の診療科を受診されています。通院時には、にこにこの介護タクシーを利用されています。普段は杖を使っての移動ですが、体調の悪い時は車いすを使われます。
 几帳面な性格のトヨさんは、約束の時刻にはきちんと玄関で待っていてくださいます。普段、一人暮らしのために他人との会話が少ない生活なので、車に乗るとすぐにいろいろなことを話されます。前回の受診から今回までの間の体調のこと、少し離れたところに住んでいる一人娘のこと、高校生と中学生の孫のこと、介護施設に入所されているお連れ合いのことなど話題は尽きません。
 結婚されてから50年、農家の専業主婦として忙しく生活されてきたトヨさんにとっては、「買いものなどの外出は控えてください」「庭の草引きなどはしないでください」など病気のためにいろいろなことが制限されている今の生活が、つらいとおっしゃられます。
 化学療法を受けられているので、食欲がない、倦怠感のために起き上がることができないといった副作用もあるようです。「何食べたらええやろか」「こんなにやせてしもうて」といった心配事や不安を口にされることもあります。
 私たちは、医療的なアドバイスはできませんが、「何食べてもええってお医者さんが言うてはりましたね」「前より顔色はええように思いますよ」などと、なるべくトヨさんに寄り添う立場で、声掛けをさせていただいています。
 2週間に1回6~7時間、いっしょにいる間だけでもおしゃべりをして気分転換をしていただけたら、少しは楽になってもらえるかなと考えています。
 通院介助は、安全な移動支援だけではなく、安心して受診していただくことに加えて、利用されている方のその時の体調や気分が少しでも楽になり、病気に対して前向きになっていただけるように支援していくということも目的だと考えています。