にこにこ通信 66号 ~まずは「伝える」声かけから~

 私が「にこにこ」に勤め始めて約3ヶ月になります。以前の仕事は革に特殊な染色をし、バッグや財布などに加工して全国の百貨店で販売していました。顧客の7割は60歳以上の方で日本はとても高齢化が進んでいると思いました。
 都合で前職をやめ昨年9月に介護職員初任者研修を受け12月に終了しました。
 介護の仕事は初めてで戸惑いもありましたが、よき職員、親切な利用者の方にご指導をいただいております。特に毎日来られる利用者の、ひささんには体操、レクリエーション、カラオケの歌い方まで教えていただいています。ひささんは、とても明るく冗談も好きですが、現役時代は大手保険会社の管理職をしていたそうです。また紡績会社に長年勤めていたふじさんはお風呂に行くとき何度も声掛けしないと入ってくださいませんが、入浴すると必ず「ありがとうな」と何度も言われながら昔の苦労話をされます。
 「にこにこ」では、障がいを持つ子どもさんも利用されます。小学生のひい君は体を動かすことが大好きです。アニマルパークに行くとまず学習館に行きタッチパネル式になっている二者択一の動物クイズに挑戦します。得点よりも正解、不正解のときの電子音やパネルの感覚を楽しんでいるようです。その後パーク内の小高い丘を走って登ったり下ったりし、今年3月に新しく出来たとても長い滑り台をすべったりします。急に走ったりするので気が抜けません。「にこにこ」内ではお手伝いもしてくれるようになり、5、6箇所の”ごみ集め”がひい君の役割です。最初は本当にしてくれるのかなと半信半疑で先輩職員とひい君をみていました。最初はかなり抵抗していましたが、職員のご褒美シールや声かけにより抵抗の度合いも少なくなりました。
 高校2年生のもり君はいつもにこにこしています。その笑顔に癒される一方油断すると腕がすっととんできます。もり君のトイレ介助を初めて一人でしたときのことです。なかなか落ち着いてくれず便器に座ってくれなかったり、叫んだり髪の毛をひっぱられたりされてとてもとまどいました。先輩に聞くと、「まだもり君がみとめてくれてないんやろな。トイレに集中させるために、終わってから何をするかを伝える。例えば、トイレ終わってからゲームをします、といった声かけをしてみて」とアドバイスをいただいたので、さっそくしてみましたがなかなかうまくいきません。あきらめずにもう少し粘ってみてはといわれ、何度か一緒に散歩に行ったりゲームをしたりするうちに、少しずつではあるけれど便器に座ってくれるようになりました。
 3ヶ月の中で思ったことは、高齢の方、障がいを持っている方とも大切な事は、良好な人間関係を築いていくことであり、そのためには相手のことを思っての声かけが大切であると思いました。
 人に思いを”伝える”声かけということは難しいことかもしれません。”伝える”事から”納得して行動してもらう事”はさらに難しいと思います。利用者様お一人お一人が、自分の意思で決定し行動する”自己決定、自己選択”をしていける支援ができるようにまた利用者の方、職員、自他共に楽しく日々「にこにこ」過ごしていけるようになればとの思いを持ち少しずつ進んでいきたいと思います。