にこにこ通信 70号 ~子どもたちの個性にあわせた支援を~

 私は、にこにこに入社し、障がいをお持ちの方の支援を担当させて頂いて間もなく丸3年になります。
 今回は、知的障がいを持っている子どもたちの支援についての経験を、いくつかあげたいと思います。
 最もお付き合いの長いひろくん、ひぃくん、こうちゃんについてです。知的障がいがあり、口話の難しい方は少なくありませんが、彼らの多くは、支援者の話していること、感情までも読み取っています。自分から話せないだけなのです。欲しないことを言われたり、指示や指導の言葉を投げかけると、気分を損ねたり荒い行動を取ったりもします。逆に、支援者の顔色をうかがって、機嫌をとったりもします。支援者は自身の五感を駆使して、相手の欲していること、好き嫌い、精神状態、体調などを読み取ることが大切になります。
 ひろくんは、絶えずかまって欲しい子です。わざと鼻をほじって鼻血を出したり、壁に頭を打ち付けたり、本を破ったり、果ては自分の爪をはがしたりして支援者をそばから離さないようにします。ひろくんはいっしょに遊んでもらったり、雑誌を広げて見ながら話をしたり、歌を歌ってもらったりするのが大好きです。ひろくんの支援は、その個性を理解することが大事です。そうして心穏やかに楽しく、にこにこでの時間を過ごしてもらえるように支援者は心掛けています。
 一方、ひぃくん、こうちゃんは、ひろくんとは真逆な個性があります。二人とも極めて行動的で、部屋の中で落ち着いて座っているなどという時間は全くといってありません。彼らの場合は、自分のしたいことをしていたい、指示されることはもちろん、かまわれることも基本的に嫌なのです。誰だって、絶えずそばに誰かにくっついていられたり、見張られていたりしたら嫌なものです。でも彼らは、とても淋しがりやでもあります。だから行動的な子の場合は、私は基本的に付かず離れずしっかり見守りし、安全を確保しながらその折々の感情をくみとり、したいことをして楽しい時間を過ごせるように支援しています。
 ひろくんが介助無しに食事や排泄ができること、ひぃくんやこうちゃんが人混みや初めての場所でも心落ち着けて行ける事、穏やかに振る舞えること、記号や文字の意味を覚え、その時その場で適切に行動できることなどを目標に創意工夫をしています。日々、少しずつ生活の質の向上がはかれるよう支援者のスキルを磨き続けていきたいと思います。