にこにこ通信 78号 ~ステキなタカさんの才能をいかせたら…~

 タカさん(40歳)は、昨年の10月からにこにこの生活介護を利用されるようになりました。
 高校卒業後、家業の酒屋を手伝っておられましたが、てんかん症状が出はじめ、通院、服薬治療をされていました。昨年骨折(鎖骨骨折)治療の通院の帰り道、路上で転倒した際に頭を強打し、原因不明の記憶障害が起こり始めました。
 家族のこと、仕事のこと、日常のできごとなど、記憶がまだらだったり、すっかりなかったり、しっかり覚えておられたりという状態は、昨年10月から現在も続いています。
 にこにこでは、運動不足の解消とかねて、骨折後の肩関節の可動域を広げるためにストレッチや体操を日課として行ってもらっています。
 自分で身の回りのことができるようになることや今後一人で生活していく力を身に着けるため、食事の準備やあとかたづけ、そうじ、洗濯、畑仕事の手伝いなどもタカさんの状態に合わせて、声掛けしながらスタッフと一緒に行ってもらえるようになってきました。
 特に、興味を持って取り組んでいただいていることは、ミルで豆をひいてドリップでコーヒーを入れることですが、手順の一部をなかなか覚えられないようです。そのつどスタッフが見守り声をかけますが、タカさん独自のコーヒーのイメージがあるようで、超アメリカンなコーヒーになったりしてしまいます。
 タカさんいわく「どないしたら、おいしいコーヒーが入れられるかなって、いっつも考えてんねん」とのこと。わたしたち職員の技量がまだまだ足りないなあと日々痛感します。
 ときには、放課後等デイサービスを利用している子どもたちと散歩に出かけることもあります。ほかの子どもとおっとりしたショウちゃんとタカさん、スタッフで公園に行った時のことです。普通の速度で歩く子どもたちとゆっくり歩くショウちゃんの距離があいてしまいました。
 すかさずタカさんは、ショウちゃんに「ゆっくりでいいねんで~。あわてやんでいいねんで~。自分のペースで、ゆっくり歩きや~」心のこもったやさしい声をかけながら手をつないで歩いてくれました。タカさんの素敵な一面が垣間見られた忘れられないできごとです。
 「もうそんなこと言うたから、百億円罰金やで」と軽口が言えるくらいにこにこになじんでこられ、「わかったわ、ひゃくえんおくわ」と言い返すスタッフとの冗談の応酬が楽しい時間となっておられるくらい体調は回復されました。
 記憶障害とはこれからもうまく付き合っていく必要があると思われますが、タカさんは、塗り絵や折り紙が得意で、細かく根気のいる作業にも素晴らしい才能を発揮されます。そんないろいろなタカさんの才能が生かせる仕事に今後つなげていけたらと考えています。