にこにこ通信 83号 ~寒い冬は室内で、過ごし方もいろいろ~

 デイサービスセンターにこにこがある宇陀市は、冬はとても寒い所です。暖冬と言われている今年ですが、2月の初めの冷え込んだ日には、水道が凍ってしまってお湯が出なくなり水道屋さんに来てもらい、大型のヒーターで溶かしてもらうということがありました。
 気候の良い季節には、近くへ散歩に出かけ車であちこちの名所旧跡を訪ねたり花見をしたりするのですが、冬は室内で過ごすことが多くなってしまいます。                    暖房の効いた部屋で、トランプの七並べや百人一首で坊主めくりをしたり、カラオケを楽しんだりおしゃべりをしたり、ジグソーパズルやぬり絵をしたり、みなさんそれぞれの過ごし方をされています。
 1月に94歳で亡くなられたイサオさんは、昔の話をよくしてくださいました。昭和の初めに満州へ渡り現地召集され、中国との戦争に従軍して右肩に貫通銃創があることや、戦後はシベリアに抑留されて苦労した話を聞かせてくださいました。戦争の生々しい体験を直接聞かせていただく機会はだんだん少なくなってきていますが、とても貴重なことだと感じています。もっともっと、お話を聞いておきたかったと思いました。「戦争は、もう絶対にしたらアカンなあ」とおっしゃっていたイサオさんの言葉を思い出します。
 にこにこでのお昼ご飯は台所で手作りするのですが、寒い冬は暖かいものが中心になります。ビーフシチューやクリームシチューなどの洋風メニューから豚汁やけんちん汁といった和風料理のほかに、トックスープという韓国のお雑煮も登場します。トックスープはたくさんの種類の野菜や牛肉、トックという米粉をこねたお団子のはいったちょっとエスニックなスープです。「初めて食べるなあ」「おいしいなあ、ぬくもるわあ」とみなさんにとても好評です。
 90代から小学生までのいろいろな年代、精神や体に障がいを持った方や認知症の方などさまざまな背景のある方が、20代から60代までのスタッフとともに、家族のような親戚のようなゆるやかな関係の中でなごやかにおだやかに過ごされています。
 外は時折雪がちらつくこともある宇陀市ですが、お向かいの家の枝垂れ梅が開いてきたり、にこにこの裏庭にフキノトウが顔を出したりと春の気配も感じられるようになってきて、冬ならではの過ごし方ももうすぐ終わりです。
 四季折々に応じて、利用者さんが季節を感じながら楽しくおだやかに過ごしていただけるように、スタッフも楽しみながらいっしょに過ごしていきたいと思っています。