にこにこ通信 85号 ~見知らぬ人たちとの何気ない触れ合いが大切だと感じた日のこと~

 今年の春は、暖冬の影響で桜の開花が早く、ここ数年の中でもとくに美しく咲き誇った桜を見ることができました。例年のように、古市場芳野川沿いの桜、岩端の桜、内牧区民の森、宝蔵寺のしだれ桜など一番美しい時期を逃さず、桜を愛でに出かけました。利用者の方々の多くは今までお花見をする機会も少なく、それぞれに楽しんでいただきました。
 散歩や野山にでかけるのに絶好の季節が到来しました。ある土曜の午後、にこにこを利用している、ヒロクン、しょうちゃん、アヤちゃんと新1年生のはやちゃん、こうちゃんとスタッフのみんなで鳥見山(735m)にドライブに行きました。
 山頂近くには鯉や亀がたくさんいる勾玉池という池があります。神武天皇聖跡伝承地の顕彰碑や歌碑があり、春には数千本のつつじが咲き乱れ、山桜も美しく、秋は紅葉が格別で、宇陀市内や奈良県内だけでなく、他府県からも多くの観光客が訪れます。展望台からは、宇陀市内が見渡せる絶景ポイントです。
 子どもたちにさまざまな生活体験をしてもらおうと鯉にエサをやることもひとつの目的として出かけました。特に新1年生のはやちゃん、こうちゃんは鯉を見たこともないということで、ふもとのコンビニエンスストアで自分の好きなおやつを自分で選んで、スタッフが鯉のエサのパンを買っていきました。
 手をパンパンと叩けば、鯉がよってくること、パンを池にまいたら競ってエサを取り合う様子に目をキラキラと輝かせて、なんどもチャレンジしていました。
 はやちゃん、こうちゃんは、とても気にいったのか終わりと言っても、なかなか鯉のところから離れませんでした。ときには、おなかがすいたのか自分の口にパンを入れている子もいて、それぞれに楽しい体験ができたようです。
 つづいて展望台までみんなで歩いていた時のことです。ハイカーの一人のおじさんとあいさつをした直後、「どこまで行くの?一緒に行こうか?」とヒロクンと手をつないでくれました。山の道はデコボコがあって、歩行が不安定になることもあり細心の注意が必要です。
 宇陀市内在住の方で「ときどき、のぼってくるから、また出会おうね」とにこやかにおっしゃって展望台まで一緒に歩いてくださいました。
 帰り道では、山菜取りをしておられたグループの方に「そんなにたくさんの山菜が取れたのですか?」とはなしかけると、なんと京都から来られたとのことでした。車の「デイサービスセンターにこにこ」の表示を見て、「デイサービスですか? 楽しそうやね、すてきな仕事やね」と声をかけてくださいました。
 さりげない日常のできごとですが、地域のいろんな場所に出かけて、子どもたち一人一人がいろいろな場面で豊かな生活体験をしていく大切さを実感しました。
 また、地域の方との自然な交流が、地域社会で障がいへの理解がさらに広がることや、障がいをもつ人への支援が当たり前のこととして社会で認識されていくことを促すということを確信しました。
 4月の土曜の昼下がり、子どもたちにとっても、スタッフにとっても貴重な体験でした。