にこにこ通信 92新年号
新年明けましておめでとうございます。
新しい年がスタートしました。昨年は、世相を表す漢字に「金」が選ばれたように、オリンピックやパラリンピックでの日本選手の活躍や、次々と発覚した政治とカネに絡む問題に話題が集まった年でした。また、昨年は、障害者差別解消法や奈良県条例がスタートし、障がいを理由にした「不当な差別的取り扱い」と「合理的配慮の不提供」が差別として禁止されるという、障がい者差別を解消するための新たな一歩が踏み出された年でもありました。差別解消法や県条例にもとづき、社会生活全般にわたって、障がい者への合理的配慮が提供されなくてはなりませんが、行政に任せるのではなく、差別解消法と県条例が、障がい当事者や家族の地域での豊かな暮らしに生かしていけるよう、私たちも共に支援していきたいと考えています。
そんな中で、事件は起こりました。昨年7月26日、相模原市の障がい者施設「津久井やまゆり園」事件です。19人の入所者が刺殺され、入所者と職員計27人が重軽傷を負い、容疑者として元職員が逮捕されました。マスコミ報道によれば、容疑者には大麻中毒による精神障がいがあり、措置入院後の退院生活で、2回通院しただけで治療を中断し、医療や福祉の支援を十分に受けないなかで、事件を起こしたとされています。
しかし、何故この事件が起こったのか、事件は防げなかったのかという点については、今後徹底した原因の究明が必要ですが、「障がい者は社会のじゃまもの、殺して当然」と公言し、殺傷事件を起こした容疑者に、拍手を送る書き込みがネット上であふれています。かつて、ナチスドイツが20万人もの障がい者を虐殺し、ユダヤ人の大量虐殺と侵略戦争へと進んでいったなかで叫ばれたのは、「障がい者は社会のじゃまもの」という宣伝・扇動でした。こうした歴史を絶対に繰り返してはなりません。
ただ、事件後、施設の警察との連携や安全対策等の強化が叫ばれ、精神障がい者の地域生活の支援に名を借りた、監視体制の強化が図られようとしていることには違和感を感じます。施設の運営はあくまで地域と一体となった、開かれた運営が中心であるべきで、精神障がい者の退院後の支援についても、医療・保健・福祉・生活等の支援が、継続的にされねばなりません。
八木一男福祉会は、昨年1年、地域と一体となった施設の運営と、本人中心の支援計画にそった利用者さんへの支援を目指して取り組んできました。4月には、空き家になっていた1985年建設の市営改良住宅2棟を市から借り、県の社会福祉施設等整備費補助金をうけて建物の改修工事を行い、重い障がいをもつ人でも利用出来る外部サービス利用型のグループホームを開所しました。現在は、入所にむけての準備期間としてヒロ君と、遠方の自宅から特別支援学級に通学するアユ君が、定期的にショートステイを利用していますが、今年の4月にはヒロ君が入所する予定で、ヒロ君の入所が定着すれば、更に入所者が増える予定です。
デイサービスセンターにこにこも、グループホームにこにこも、民家や市営住宅といった既存の住宅を改修した小規模型の施設で、私たちは、小規模型の良さを生かした家庭的雰囲気と、地域に開かれた施設とするため、地域の人との関係づくりを大切にした運営を心がけています。今年は、地域との関係づくりを更に進めるため、グループホームの一室を活用して、憩いの場を開設しようと考えています。地域の人たちが気軽に出入りができ、お茶やコーヒーを飲んでホッとくつろげる場所。庭には、にこにこ農園で採れた季節の野菜が並び、安い価格でもって帰ることが出来る。その憩いの場の運営をデイにこにこの利用者さんが行うことができれば、きっと楽しい憩いの場になることだと思います。
昨年は、熊本、鳥取で大きな地震が発生し、甚大な被害が出ましたが、「大きな災害が起こって避難せねばならなくなった時、自分の子どもの障がいのことを世間の人がどれだけ知っていてくれているのか、非常に不安」という声を、大きな災害がある度に、障がいをもつ子どもの親から聞きます。地域には、生活に様々な困難を抱えた人たちが暮らしており、相談支援から公的なサービスへとつながらない、生活困難者も多くいます。その町が住みやすいかどうかは、そうした生活困難者を排除するのではなく、包みこんで支えられる地域であるかどうかです。八木一男福祉会は、今までの経験を他の地域にも広げていくため、今年の活動に頑張って取り組んでいきます。
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