にこにこ通信 104新年号

 新年あけましておめでとうございます。新しい年がスタートしました。
 昨年は、世相を表す漢字に「北」が決まったように、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の度重なる弾道ミサイルの発射や核実験などに、脅威と不安が広がった年でした。気がつけば、地元のテレビニュースで北朝鮮のミサイルの落下時の退避行動が放映されていたりして、戦時下の状況を思わせるような雰囲気も生まれています。我が国の首脳には、やたら危機意識を煽り軍事的圧力を強めるのではなく、対話によって挑発行動をやめるよう、北朝鮮への交渉を続けていただきたいものですが、現実はアメリカのトランプ大統領に従い、全く逆の方向に進んでいます。トランプ氏は就任当初から問題発言が相次ぎ、あげくの果ては、エルサレムをイスラエルの首都にと言い出す始末です。それによって、新たな混乱が発生し、犠牲者が生まれています。
 昨年の12月10日、ノーベル平和賞と文学賞の授賞式が行われましたが、文学賞を受賞した日系英国人作家のカズオ・イシグロさんは、スピーチで、「私たちは今日、部族間の憎しみがますます大きくなり、共同体が分裂して集団が敵対する時代に生きています。私の分野である文学と同じく、ノーベル賞は、こうした時代にあって、私たちが自分たちを分断している壁を超えてものを考えられるよう助けてくれ、人間として共に闘わねばならないことは何かを思い出させてくれる賞です」と述べています。憎しみと対立ではなく、寛容と対話によって、新たな世界秩序がつくられていくよう、私たちには何ができるかを考え行動していかねばなりません。
 また、昨年はデイサービスセンターにこにこが、事業開始以来10年が経過し、八木一男福祉会の活動も節目を迎えた年でした。この10年の間、たくさんの人たちとの出会いがありました。デイサービスセンターにこにこは、高齢者や障がいを持つ人が利用する複合型の施設ですが、認知症がある高齢者も多く利用されています。事業を始める時は、認知症のことは研修会や本で読んで知っているぐらいで、実際に介助を経験した職員はいませんでした。10年の間で私たちも経験を積み、成長させていただいたと思っています。特に、事業開始以来の利用者さんであったカズ子さんやアサ子さんには認知症がある方への介助の在り方を随分と勉強させていただきました。「どんな話をされても否定しないでコミュニケーションをとること、寄り添うということ、人生の先輩として尊敬して接すること」
 医療行為が必要となり、在宅での生活が難しくなって、入所施設に移られた方もおられますが、本人や家族が望むところで生活し続けられる、地域社会をつくることは、これからの私たちの大きな課題でもあります。
 そんな理想を実現するため、昨年4月に障がいをもつ人の入所施設をオープンしました。築30年の市営改良住宅を改修したグループホームで、重い障がいをもつ人が、地域で住み続けられるための拠点となるよう、地域とつながった運営を心がけています。現在の利用者は、ヒロ君とアユム君の二人ですが、ヒロ君は今年成人式を迎えます。一人で成人式に参加することが難しいヒロ君は、二人の介助者とともに成人式に参加する予定です。ヒロ君は、昨年と一昨年の選挙の投票にも行きました。文字が書けず、言葉が出ないヒロ君には、市の方にも配慮を求め、選挙公報の候補者の写真の指さしでの投票が認められました。前例のない彼の歩む道は、ひょっとしたら、誰もが歩きやすい社会の道へとなっていくのかもしれません。
 株価が上昇して景気が良くなり、有効求人倍率の高さがアベノミクスの成果として宣伝されています。しかし、実際には労働者の賃金は上昇せず、非正規雇用が増加しています。一昨年一年間で、誰にも看取られずに自宅で亡くなった一人暮らしの人が、約17000人に上ると新聞発表されていましたが、周囲に助けてくれる人がいなかったり、介護などに関する情報を得る機会がなかったことが、背景にあるとされています。
 様々なSOSをキャッチし、どんなに重い障がいや生活に困難があっても、その人を包み込んで支えていく地域社会、そんな地域の拠点として、今年も「やさしさと人への思いやり」を軸にして、デイサービスセンターにこにこはがんばっていきたいと考えています。