にこにこ通信 108号 ~個人の中の緩やかな成長を見守る~

 特別支援学校に通うアユくんは、現在中学部3年生です。
 普段は放課後やお休みの日ににこにこのデイを利用したり、週に数回にこにこのショートステイを利用したりしています。大抵は、昨年に二十歳の誕生日を迎えたヒロさんも一緒です。
 大親友のヒロさんとは、年齢も体格も違いますが、会うたびにべったりくっついてお互いの行動に笑い合うなど、とても仲良しです。しかし、時には押し合いをしたり、ヒロさんが首にかけているタオルを遠くへ投げたりと、ちょっとしたイタズラもします。
 私が初めてにこにこへ来た頃は、お互いにそれほど興味がある様子はなく、同じ部屋にいても別々に遊んでいる印象しかありませんでしたが、いつの間に打ち解けたのか、今ではすっかり二人でいるのが当たり前になりました。
 最近のアユくんは、にこにこの予定表を指差し、「ん」と言ってスタッフによく予定を確認しています。スタッフが「今日はにこにこでお泊りします」「明日はお家へ帰ります」など、一つ一つ丁寧に伝えると納得しますが、しばらくするとまた同じやり取りがくり返されます。連日のお泊りで家が恋しいのか、それとも次のお泊りの日が楽しみなのかはわかりませんが、周りに促されてから行動することの多いアユくんには珍しいことだと思いました。
 年々できることが少しずつ増えてきているアユくんですが、時々靴を反対に履いていたり、服の裏表を見ての着脱や、脱いだ服を裏返すのが苦手だったりと、日常生活においてはまだまだ支援が必要なことがたくさんあります。日頃から少しずつ練習し、最近では靴下を上手に履けるようになってきました。また、最初は手を動かして「磨く」という動作すら難しかった歯みがきも、同じ場所だけですが、手を小刻みに動かして磨くことができています。
 そして、アユくんはお手伝いが大好きです。食器や机拭き、掃除機がけ、荷物持ちなど、スタッフが声かけをして応じてくれることもあれば、自ら進んで行ってくれることもあります。
 ヒロさんの補助も得意です。いつも買い物やお出かけなどの際には、スタッフが「アユくん、ヒロさんのことお願いね」と声かけをしていましたが、つい先日はスタッフが何も言わずともヒロさんの手を引き、レジでお会計をしている間にヒロさんが機械や商品に触ろうとすると、その手を優しく握ってくれました。そして、そのままお金を支払い、おつりと領収書を受け取りスタッフに渡してくれました。
 アユくんは、普段スタッフがヒロさんに対して注意の声かけをしている様子をよく見ています。ヒロさんがやってはいけないことをしようとすると、誰に言われずともやんわりと止めてくれることが今までに何度もありました。そんなアユくんとヒロさんの関係を見て、スタッフが何気なく「卒業してからもヒロさんのことよろしくね」と言うと、アユくんは「うん」と返事をしてくれました。
 アユくんが学校を卒業するのはまだまだ先ですが、きっと今よりもずっと色んなことができるようになっていることだと思います。彼の将来を楽しみに、これからも側で成長を見守っていければと思います。