にこにこ通信 109号 ~心のささえになれる「にこにこ家族」になりたい~

 にこにこ通信にときどき登場するトシさん(50代)は独り暮らしです。
 建設会社で勤務されておられましたが、会社が倒産し、その後離婚され、宇陀市在住だったお母様と同居されておられました。一昨年お母様が亡くなり、息子さんと娘さんとは疎遠で、あまり会うことも難しいようです。
 デイサービスセンターにこにこに通われるようになって、3年半がたちました。利用が始まったころは、ご自分で歩くことも難しい状態で、お話もあまりされませんでした。その後入退院を繰り返しながら少しずつ体力がついてこられ、様々な内臓の機能も回復しつつあります。
 最近は、冗談が頻繁に出るようになり、朝来られた時から、スタッフに「おはよう! 今日はあんまりいじらんといてや」と笑顔で声をかけてくださいます。スタッフも負けじと「こちらこそですわ~」とお返しします。ぽっちゃり体型のトシさんは、同じくぽっちゃり体型のスタッフに、わざと「ちょっと体重落としや~」とおっしゃって、スタッフも「トシさんこそですわ~」と言ってお互いに大笑いをしています。
 アルコール依存症で精神障害、低栄養で、褥瘡、筋力低下で歩行困難の状態から、今ではコーヒーの豆をひいたり、カラオケ、軽作業までこなされるまで回復されました。
 ご本人の目標は、「仕事ができるようになり、収入を得られるようになりたい」ということで、1日2箱吸っていた煙草も1箱に減らし、自分の身の回りのことは自分で出来るようになろうとさまざまに努力された結果が現在につながっているようです。
 「なんとか断酒できますか?」とおたずねすると「減らしてはいるけどね~」という答えが返ってきます。断酒会への参加もおすすめしましたが、参加の意思はなさそうです。
 にこにこで週3回の生活介護のご利用と通院介助を支援させていただき、他の事業所で家事援助の支援を受けて、訪問看護師が定期的に訪問するという生活の中で、関わる人たちとの信頼関係が築けているのが、トシさんにとってとても大きな存在となっているのは確かなことだと感じます。
 月に1回必ず散髪に行き、清潔な衣服を身につけ、おしゃれにも気をつけて、ご自分でしっかりと生活を成り立たせていくための努力をされておられる姿を拝見し、何とかご自身の目標が実現できるようにとスタッフ全員心から応援しています。
 にこにこに来られる利用者さんは、様々な課題をかかえながら通って来ておられます。
 利用者さん同士の交流やスタッフとの何気ないふれあいや会話を通して、それぞれの方々が笑顔になったり、おたがいに元気をもらったり、どこか心のささえになれる「にこにこ家族」になりたいと願いながら、今日も明るく笑顔でお見送りをします。
 「ありがとうございました! また明日!」利用者さんも返してくださいます。「おおきに! また明日よろしくね」。