にこにこ通信 112号 ~心豊かな暮らしのために自己決定を尊重したサービスを~

 デイサービスセンターにこにこでは、お誕生日の方のいる月に1回、お誕生日会を行っています。
 7月にお誕生日のある方は4人いらっしゃいますが、子どもたちとは別企画にしているので、昭和7年生まれのエイコさん86歳のお祝いを7月31日に行いました。
 久しぶりにゲストをお招きし、沖縄民謡を披露していただきました。素敵なご夫婦(エレナさんとコウタローさん)で演奏活動を外でするのは初めてという方々でしたが、本格的な三線と太鼓の演奏、琉球紅型の着物で踊りながらの歌で、沖縄ムードを満喫しました。
 いつものようにみんなで寄せ書きをした、お誕生日カードを渡し、おいしいケーキをいただきました。
 利用者さんでエイコさんより3歳年下のトシさんもそのお誕生会に参加されました。いつもは疲れるからという理由で午後1時30分には帰られるのですが、その日はたまたまお誘いしたところ参加しますとのことでした。
 エレナさんの指導で沖縄民謡の掛け声「サーユイユイ」や「イーヤーサーサー」と声を出したり、踊りの手ほどきもしていただきました。
 寡黙で、日常ほとんど声を発することも少なく、表情も固いトシさんが、その時ばかりは、笑顔で踊りと歌も一緒にされたのでした。
 帰路、車の中で「楽しかったわ―、ほんとによかったわー、ありがとう」と感謝の思いを述べられたと知り、スタッフ一同感動しました。
 にこにこで行われるレクリエ―ションにもあまり参加されず、拒否されることも多いトシさんが、そんなに心を動かしていただいたことはとてもうれしい出来事でした。
 その次のご利用時のトシさんの様子は、いつものように静かで寡黙ないつものトシさんでした。
 高齢になって足腰が弱り、生活の活動量が低下してしまっても、感情は豊かにいきいきと息づいておられるんだということを再確認しました。
 日頃は、安心して穏やかに、消化の良い食べ物をおいしく召し上がっていただき、安全にお風呂に入ってもらい、体力や身体機能の現状維持を最優先の課題としてデイの運営を行っていますが、人としての尊厳を大切にしながら、心豊かな暮らしが「自己選択・自己決定」できるように、出来るだけたくさんの選択肢を提供できるように努力することを決して怠ってはいけないと肝に銘じました。
 「介護福祉士はすべての人々の基本的人権を擁護し、一人ひとりの住民が心豊かな暮らしと老後が送れるよう利用者本位の立場から自己決定を最大限尊重し、自立に向けた介護福祉サービスを提供していきます」というのは日本介護福祉士会倫理綱領に掲げられた1つの項目ですが、日常の活動の中で常に振り返りながら基本を忘れてはならないと気付かされたエピソードでした。