にこにこ通信 116新年号
新年あけましておめでとうございます。新しい年がスタートしました。昨年は、世相を表す漢字に「災」が選ばれたように、大きな自然「災」害に多くの人が被「災」した年でした。年の前半は、韓国平昌での冬季五輪、サッカーW杯ロシア大会での日本選手団の活躍に日本中が沸き、後半は、6月の大阪北部地震に始まり、西日本豪雨、台風21号と24号の近畿地方直撃、北海道胆振東部地震等、予想を越えた自然の猛威に日本列島が包まれました。記録的とか異常なという言葉が何回となく使われましたが、夏の厳しい暑さのなかで、何人もの人が熱中症により亡くなられました。気象庁の予報官がテレビで解説していましたが、これからは夏は危険な季節と考え、自分で自衛策を考えることが必要です。すすまない核軍縮、繰り返される自然破壊と環境汚染、人間の身勝手さに地球が怒っているようにも思いますが、共助の精神は間違いなく高まっています。被災地では災害復興を支えるボランティアの姿があり、山口県で2歳児を山中から救出したスーパーボランティアの活躍がありました。
そんな一年でしたが、八木一男福祉会は、様々な生きづらさをもつ利用者さんと家族が穏やかに生活が送れるよう、日中の支援と泊まり、外出支援を中心に事業をおこなってきました。デイサービスセンターにこにこには、気候の変化に敏感な利用者さんもおられます。トシさんは、交通事故で脳に損傷をうけ、春秋の季節の変わり目や厳しい暑さや寒さには、感情のコントロールが難しく、パニックを起こされる日もあります。普段は穏やかに、本を見たり、タブレットでゲームをしたり、他の利用者さんとカラオケを歌ったりして過ごされていますが、感情の起伏の激しい日は、大きな声で叫んだり、壁に頭をぶつけたりされる時もあります。私たちは、見守りを基本にしながら、危険と判断した時以外は彼の行為を否定しないようにしています。以前に、広範囲脳梗塞により身体機能と脳機能に障がいをもち、高次脳機能障害をもった当事者の方の話しを聞いたことがありますが、私たちには気にならない気候の変化が、高次脳機能障害をもつ人には、寒さや暑さ、風の変化が体に大きな影響を与えるという話しでした。歴史上の人物の健康面に注目した番組がテレビであり、忠臣蔵の赤穂藩主・浅野内匠頭の刃傷事件が紹介されていました。史料によれば、内匠頭には「つかえ」という消化器官の慢性的な持病があったとのことでした。近年では「天気痛」という名で注目されている病気で、曇りの日が続くと持病の悪化とイライラの悪循環をもたらすらしいのです。刃傷事件の当日と前日は江戸上空に気圧の前線が横切っていた可能性があり、刃傷事件の当日は、内匠頭のイライラはピークにあったとの推測でした。まさに、内匠頭の刃傷事件は、起こるべくして起こった事件というのが、番組のゲストの結論でした。デイにこにこには、自閉症の児童や知的障がいがある人が利用していますが、それぞれ色んな特性をもっています。強い感覚の刺激を求める人、特定の音や匂いが苦手な児童、異食と言って道の草等を食べる人もいます。私たちは、命にかかわる危険な状態が生まれないため、どんな音や匂いが苦手なのかを把握し、支援に努めていますが、まだまだ手探りの状態です。
ところで、昨年の11月、ユネスコは秋田県の「男鹿のナマハゲ」など「来訪神」を無形文化遺産に登録することを決めました。正月など一年に一度、季節の変わり目に人々の世界に来訪して、豊饒や幸福をもたらすとされている神々で、来訪神は仮面仮装した異形の姿であらわれます。ナマハゲ系統の来訪神は有名ですが、なかにはポリネシアのお祭りに出てくるような色鮮やかな来訪神もいます。それぞれの地域には、個性豊かな来訪神があり、見ていてどこか楽しい気持ちにさせてくれます。自然がもっと人間の身近なところにあったころ、もっと沢山の来訪神がおり、地域の厄払い役を担っていたのでしょう。来訪神のように一年に一度ではありませんが、人々をなごやかにする利用者さんがデイにこにこにいます。食事や排泄等、他人の支援がなければ生きていくことは出来ませんが、気にいらないと人を叩いたりつねったり、唾をかけたり、大きな声を出したり、食器をひっくりかえしたりする等、好きなことをしてくれます。ところが、ニコッと笑って、人を自分のまわりにとりこんでいきます。彼の生きている意味は、人々を和やかにすることではないかと思うことがあります。それぞれの利用者さんのしたいこと、素晴らしいところを共に考え、地域のなかでの役割を見つけられるよう、今年も支援に頑張っていきたいと思います。
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