にこにこ通信 119号 ~一人ひとりが自分らしく生きるための支援~

 デイサービスセンターにこにこを週2回利用しているサチさんは、42歳の女性です。多発性硬化症という難病を抱え、歩行は困難で、外出するときは支援が必要です。毎週リハビリに整形外科を受診する際には通院介助を、外食や買い物には移動支援を利用して余暇をたのしんでおられます。
 ある日の外出支援の日、朝お迎えにうかがうと「久しぶりの外出やわ~、うれしい! なんか、生きているって感じるわ~!」と両手を挙げて歓喜の声を上げられました。支援が入らない日はご自分の部屋のベッドの上でほとんど一人きりで過ごすことの多いサチさんの心の叫びでした。
 その日は車で1時間ぐらいかかる大きなショッピングセンターに行き、ペットショップで犬を抱かせてもらい、ペットショップの職員さんと犬の話で盛り上がり、お昼ごはんには、念願の「もつ鍋」を介助者と一緒に食べられました。
 介助者が「もつ鍋」を食べられないと実現しなかったし、その店のシステムでは二人以上での予約が必要だったので、サチさんにとってはかなり高いハードルをクリアされたとのことで、「ほんとに、ほんとに念願がかなって幸せ~!」と2回目の歓喜の声でした。
 介助者は「こんな昼間っからもつ鍋?」という思いがよぎりましたが、サチさんの思いに寄り添うという選択をしました。
 ご自宅では入浴が困難なので、デイに来られた時は、安心して安全に湯船にゆっくりとつかってもらっています。お風呂も楽しみの一つですが、カラオケで思いっきり大きな声を出して好きな歌を歌われるというのも大きな楽しみの一つだといつもおっしゃっておられます。
 病気の進行によっては、近い将来味覚を失ってしまうかもしれない、咀嚼もできなくなるかもしれないという恐怖を感じているとのことで、「味わえる機能が残っている間に食べたいものを食べておきたい」と強く願っておられます。
 朝デイに来られた時は、沈んだ表情で口数も少ない様子の時もありますが、帰られるときには、すっかりストレスを解消されたかのような晴れやかな明るい表情で、「さよなら~!また来週!」と元気な声で帰って行かれます。
 ある日しみじみと「私が今、病気が重くならないで、なんとか現状維持ができているのは、お出かけをして、おいしいものが食べられて、カラオケをして、お風呂に入ることができて、充実した時間が過ごせているからだと思います。ありがとう」と話されました。
 住み慣れた地域で安心して、おひとりおひとりが自分らしく生きるということを支援させていただくということが、ほんの少しできているのかもしれないと感じた出来事でした。