にこにこ通信 125号 ~にこにこで過ごして心穏やかな日常を~

 暑かった夏が終わり、黄金色に輝いていた田んぼの稲刈りが始まり菟田野にも秋が訪れました。稲刈りの終わったあぜ道には、真っ赤なヒガンバナが咲き始めました。 

 にこにこの庭のイチジクがふっくらと熟し、お昼ご飯のデザートに出されました。利用者の皆さんに大好評で、あるときは冷たく冷やしてそのままで召し上がっていただいた り、ある時は赤ワインで煮てコンポートにして提供させていただきました。

 コンポート作りを手伝ってくださったのは、トシさんです。トシさんは、大学生の時に大きな交通事故にあわれ、10年以上になりますが、歩行や生活の様々な面で困難を抱えておられます。これまで、春と秋にはとても不安定になることもあり、自分で自分の気持ちをコントロールできなくなるようなところもありました。

 にこにこに通われるようになって約3年になりますが、一日のうちでも午前と午後で大きく変化されることもあり、スタッフも対応に試行錯誤を続けてきました。トシさんの好きなものは、ミニ四駆やガンダムなどのプラモデル作り、タブレットでゲームなどですが、ゲームセンターに行ってゲームをすることを希望されることもあり、できる限り希望に寄り添った対応をさせていただいてきました。

 この夏ぐらいからトシさんの表情がとても和らいできて、他の利用者さんと楽しく会話されたり、スタッフと冗談を言い合ったりされるようになってきて、本来のトシさんの姿になってきておられるのかなと感じています。

 イチジクのコンポートを作るには、表面の薄皮をはがすということが必要なのですが、その繊細で神経の集中を要求される作業をすすんで手伝ってくださり、楽しんでおられました。

 トシさんは、おやつに甘いものを召し上がるのがお好きです。朝のお迎え時にコンビニに立ち寄って、好きな羊羹やグミや飴などを買われますが、必ずスタッフに「一口いかがですか?」と言ってすすめてくださるとてもフレンドリーな方です。

 甘いもの好きのせいか、最近体重が増えてきてご自分でも気にされてきたようで、スタッフに「ぼくは、すこしぽっちゃりしていますか?」と聞かれたので「そうですね、少しぽっちゃりしていますね」と答えるとそれ以来おやつの量を減らされたり、ショートステイに行っている施設にある、固定式自転車をこぐことなどを自ら始められたようです。

 にこにこのカラオケタイムには、古い演歌などをうたわれるのですが、歌詞を覚えておられて画面を見ずに歌っておられ、他の利用者さんやスタッフも驚いています。

 トシさんはお父さんとの二人暮らしで、お父さんはフルタイムでお仕事をされているので、家事やトシさんのお世話など負担の多い日々を送っておられます。

 トシさんには現在3つの事業所がかかわり、日中の居場所づくり、家事援助、外出支援、短期入所、相談支援などを連携しながら支援させていただいています。

 このところトシさんが安定しておられるのは、時期的なものなのか支援がうまく作用しているのかわからないところもありますが、今後も充実して、トシさんにとって楽しい時間が多く持てるように願いながら試行錯誤を続けていきたいと思います。