にこにこ通信 127号 ~子どもたちとの触れ合いがもたらすもの~

 にこにこで生活介護を利用されている40代のタカさんは、車椅子と歩行器を使用して毎日生活されています。平日は朝から児童館へ来館され、タカさんと同じく毎日にこにこを利用されているヒロさんと一緒に過ごされます。子どもたちの相手をするのが好きなタカさんですが、子どもたちが児童館にいない日は、ヒロさんやスタッフとコミュニケーションをとられたり、家から持参された音楽プレーヤーで音楽を聴かれたり、漫画を読んで静かに過ごされることがほとんどです。天気の良い日は散歩に出かけることもありますが、運動不足による体重の増加や筋力の低下が心配されています。

 先日、ヒロさんは朝から用事で外出され、タカさんとスタッフの二人で過ごすことがありました。以前畑で収穫したサツマイモを洗って干す作業が残っていたので、スタッフがタカさんにお手伝いをお願いすると、タカさんは快く引き受けてくださいました。スタッフが洗い場で洗ったイモをタカさんにお渡しすると、タカさんはカゴに入れたイモを自分の膝の上に乗せて車椅子で運んでくださいました。自分のズボンが汚れないようにと膝の上に段ボールを乗せ、その上にカゴを置いて、タカさんなりに工夫をされていました。サツマイモを干す作業が終わった後も、児童館に置いてある空き缶の入った袋を見て、「缶つぶしでもやろかなぁ」とおっしゃられるなど、その日はとても意欲的に活動されていました。

 また、11月3日に菟田野人権交流センターで行われた人権フェスティバルのバザーでは、タカさんが創作されたハーバリウムを自ら販売されました。机の上にずらりと並んだ自分の作品を見て、「これはこの色の方がええんちゃうか」「お客さんにその場で好きな色を選んでもらったらどうや」と試行錯誤されたり、余っていた材料を使ってその場でハーバリウム作りをされたりしていました。そして、そのすぐ隣ではにこにこで収穫したサツマイモで作った焼き芋の販売も行われていましたが、お客さんから注文が入ると、タカさんは誰に頼まれるでもなく自ら進んで袋の準備をされていました。

 日頃スタッフには「疲れたわー」「なんで俺がそんなことしやなあかんねん」と文句の多いタカさんですが、人から頼まれたことや自分でやり始めたことには、最後まで集中して取り組まれています。また、自主的に子どもたちにトイレや片付けの声かけをして、その補助もしてくださっています。

 今ではすっかりにこにこスタッフの一員のようなタカさんですが、にこにこへ来た当初は今ほど気力がなく、他の利用者さんとの関係もあまり良いものではありませんでした。それが子どもたちとの触れ合いや、他の利用者さんやスタッフとのコミュニケーションを通じて徐々に改善され、穏やかな表情をされることも増えてきました。

 まだまだ若いタカさんが今後どのような将来を描き、歩まれるのかはわかりませんが、共に考え、少しでもその助けになるような支援を今後も続けていきたいと思います。