にこにこ通信 128新年号

 新年あけましておめでとうございます。昨年は、元号が平成から令和へとかわり、世の中は祝賀ムードで盛り上がった年でしたが、世の中を震撼させるような事件も多発しました。川崎市でのスクールバスを待つ児童への無差別殺傷事件、京都アニメへの放火殺人等、今まで考えられなかったような、無差別大量殺人事件が発生しましたし、親から厳しく言われ、ノートに反省文を書き残して亡くなった児童のように、痛ましい虐待事件も続発しました。また、大きな自然災害も多発しました。一昨年の大阪北部地震が発生した同じ日の6月18日、新潟で山形県沖を震源とする震度6の地震が発生し、多くの被害が起きました。8月には九州北部で記録的な豪雨、9月の台風15号の千葉県南部への上陸、続く19号の上陸によって、東海から関東にかけての記録的な豪雨による河川の氾濫で、甚大な被害が起きました。地球温暖化による異常気象は、ここ数年、今までの常識を越えた規模で、私たちに襲いかかってきています。

 これから続く令和は、自然災害と防災、教育や福祉等、今までのわが国の社会のあり方の抜本的な改革にむけての時代としなければなりません。

 そんな社会状況でしたが、ラグビー・ワールドカップの日本チームの奮戦ぶりは、国内中を沸き立たせてくれました。世界の強豪を次々と破り、史上初の8強入りをはたしました。『負けざる者たち』という映画がありましたが、政治的にはアパルトヘイトが廃止された南アフリカで、モーガン・フリーマンが演じる当時の大統領ネルソン・マンデラが、人種差別や経済格差をなくし、国民融和をすすめていくために、自国で開催されるラグビー・ワールドカップでの優勝が必要と感じて、チームをまとめていくというもので、なかなか感動的な映画でした。今年は東京オリンピックも開催されますが、半世紀前に開催された前回のオリンピックは、カラーテレビが普及し始めた頃に開催されました。今年、オリンピックの開催によって加速していくものは何でしょうか。国民不在の憲法改正の論議だけは、加速させてはなりません。

 こうした社会の変化のなかで、デイサービスセンターにこにこの一年も、色々と活動に変化があった年でした。昨年3月に障がいがある子どもたちの活動の拠点となっている児童館に、ボルダリングを設置したことです。今年のオリンピックの正式種目にもなり、日本選手のメダルも期待されている競技ですが、体幹が鍛えられ、判断力と創造力を養うのにも効果があると言われています。子どもたちは、放課後や休日の利用時には、自分でコースを考えて、壁に挑戦しています。デイにこにこを利用している子どもたちには、日常の生活のなかで様々な壁があります。自身がもっている障がいと社会との関係によって生じる生きづらさという壁、親の依存症や生活困窮という壁。子どもたちが、色んな人たちの支援を受けながら、困難な壁にたち向かっていく力が育っていくことを願っています。

 また、昨年はサツマイモが豊作で大量に収穫することができ、人権フェスティバルを始めとして、各種イベントで焼き芋にして販売することができました。一昨年は、収穫間近になったサツマイモを猪に食い荒らされ収穫はわずかでしたが、昨年は早めに収穫したことで獣害にあわずにすみました。12月には、特別支援学校の生徒さんの実習で、野菜とともに、収穫したイモを焼き芋にして販売することができました。沢山の人たちに買っていただき、「焼き芋なんて、懐かしいなぁ」、「またしてや」という声も多くて好評でした。デイにこにこの利用者さんたちの、地域とのつながりをつくっていく新たな事業として、今年からは、定期的に配達も含めて実施していきたいと思っています。

 キャッチフレーズは、「焼き芋と一緒に笑顔もお届けします」です。

 昨年末、残念なことが起こりました。アフガニスタンで活躍されている、ペシャワール会の中村哲医師が襲撃されて亡くなったという事件です。彼の母方の祖父は、『花と龍』という映画と歌で有名な玉井金五郎です。この家には、「弱きを助けよ」という家訓があり、受けつがれているそうです。格差社会と言われているように、世界中の国々においても、国内をみても格差は広がっています。天井がなく、底がないような時代です。そんな時代にあっても、デイサービスセンターにこにこは、常に弱い立場にある人とともに、その人たちの夢と希望を実現できるよう、今年も伴走していきたいと思っています。