にこにこ通信 19号

 たっちゃんは、毎週土曜日に児童デイを利用している明日香養護学校小学部の4年生です。自走式の車いすをじょうずに使って自分の行きたいところに行きます。工事の車や消防自動車など、はたらく車が大好きです。散歩に出かけて消防車の車庫の前を通ると必ず「ウーウーカンカン」と大きな声で言って大喜びをします。話をすることは、苦手なたっちゃんですが聞くことはとても得意です。ちょっとした音にもすぐ反応します。はじめてにこにこを利用した日には、食器洗い機の音がとても気になったようでした。他の人の言っていることもみんな理解できているようで、うなずいたり首を振ったりして返事をしてくれます。

 2月のある土曜日の午後のことです。昼食が終わってスタッフが後片付けをしていて、毎日デイを利用しているカズさんとたっちゃんがテーブルの対面に座って休憩していました。カズさんはいつも「おとうさん来るなあ」というのが口癖なので、その時もいつものように「お父さん来るなあ」とおっしゃいました。すると、たっちゃんがとても良いタイミングでうんうんと言うようにうなずきました。それを見たカズさんは、満足そうにまた「お父さん来るなあ」とおっしゃいました。ただそれだけのことですが、二人の間に何かとても暖かいものが行き交ったような気がしました。

 にこにこでは、はじめ土曜日は児童デイの日だったので高齢者のカズさんが土曜日も利用されるようになったとき、しょうがいをもった子どもたちと高齢者の方とが、うまく過ごすことができるのか不安な面もありました。しかし、いっしょに過ごしてみるとなかなかよい時間が流れることがわかってきました。もちろん、子どもたちが大きな声を出したり、積木をガラガラと崩したりしたときなどは、「やかましい!!」と怒られることもあるカズさんですが。

 夕方、カズさんと子どもたちそしてスタッフもみんなでアンパンマンのDVDを見たりしていると、ゆっくりのんびりした気分になります。いろいろな年齢の人たち、いろいろな困難を抱えている人たちが、それぞれができることをできる範囲で支え合っていければいいなあ、そういうことを少しでもお手伝いできればいいなあと思っています。