にこにこ通信 18号
「押し」と「引き」
子育ての極意は、じょうずな「押し」と「引き」だとよく言われます。
私自身の子育てを振り返ってみれば、仕事をしながらの余裕のない毎日のなかで、「あれをしなさい!」「早くしなさい!」と口うるさく声かけをする、「押し」て「押し」ての連続だったように思い、反省しきりです。
デイサービスセンターにこにこでの仕事で、こどもと接するとき、かつての経験をふまえ、もっとうまく対応できないものかと葛藤する日々です。
にこにこに学校から帰宅後、毎日来てくれている「たい君」は、ダウン症をもつ子どもで、ゆっくり、じっくり一歩ずつ確実に成長している様子です。
ダウン症候群とは、染色体異常のために先天性の心臓疾患や知的障害など、いろいろな障害を起こしてくる病気のことを言うそうです。ダウン症候群の場合、本来46本ある染色体のうち、21番染色体が生まれつき1本多いことが原因となるそうです。
偶然起こったことなので、いわゆる遺伝性はなく、誰にでも起こりえるとのことです。約1000人弱に一 人の割合で生まれてくるらしく、先天性異常の中では最も多い疾患ということです。
多くの場合赤ちゃん時代は、ゆっくり発達し、2歳でようやく歩いたり、お話ができるようになったりする場合が多いといわれますが、たとえゆっくりであっても伸びていきます。愛嬌があって、人なつっこい性格はダウ ン症のこどもたちの特徴です。
「たい君」の得意なことは、たくさんあります。いちばん印象に残るのは歌です。たくさんの歌を上手に歌い、歌詞もメロディもおどろくほど数多く暗記しています。「たい君」の大切にしている童謡の楽譜本(3000曲掲載)は、何回も何回もページをめくっているのか、何ページにどの歌が載っているのか、ほとんど記憶している様子です。
パズルの組み立ても、集中力があり、素晴らしい作品を仕上げています。
悩みの種は、注目してほしいと思っているのか、「あほか!」などと、聞けばとがめたくなる言葉を連発することです。「たい君」自身も、「良いと思う?悪いと思う?」と尋ねられたら、「悪い」と答えるように、わかっていても、つい言ってしまうようです。
上手に「押し」ながら、子どもが自ら成長する力を発揮できるようにじっくり待つという「引き」ができればと、格闘の日々の中、かつての自分の子育ての時代を思い返し、またしても自分育ての必要性を実感しています。
「たい君」といっしょに、ゆっくり、じっくり一歩ずつでも、確実に成長できればと願っています。
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