にこにこ通信 10号
今年の春休みに、四人の障がいをもつ子どもたちが「にこにこ」にやってきました。それぞれ個性的な子どもたちですが、そのなかに、自閉症のMちゃんがいます。Mちゃんは、二階堂養護学校小学部二年生の女の子で、いつもお気に入りのピンクの上着を着、冬の寒い日でも靴下ははかず、じっとしているのが嫌いな子です。たえず動きまわり、ソファーの背もたれの上にあがっては、跳んだりはねたりして、その都度、利用者のTさんから、「お嬢ちゃん、そんな所にあがってはダメよ」と注意されますが、本人にはどこ吹く風。とにかく元気のいい子です。また、Mちゃんは、自閉症の特徴である強いこだわりをもっています。ちょこちょこと台所に来て戸棚の引き出しをあけては、泡立て器を手に取ります。お昼ご飯の準備をしているときは、台所に入って来ては危ないと注意されますが、何回となくその行為を繰り返し、泡立て器が決まった場所にあることを確認します。公園に遊びに行ったときは、滑り台、シーソー、雲梯と遊ぶ遊具の順番も決まっており、一つの公園で一通り遊んだら、少し離れた別の公園に移動します。Mちゃんは、室内でも行きたい所があれば、そこに人がいようとおかまいなしです。ソファーに座っている人がいようと、足をのばしている人がいようと、真っ直ぐ人の前を横切ります。利用者の中で最長老のKさんがソファーに座り、別のソファーに足をかけてくつろいでいるとき、Kさんの足をソファーから降ろしてMちゃんがKさんの前を横切るという事もありました。とっさにKさんの顔をみましたが、Kさんも呆気にとられてポカンとされていました。しばらくするとKさんはにこっと笑って、ソファーに座り直されていました。
Mちゃんをはじめ、とにかく「にこにこ」にやってくる子どもたちは、なにかとわたしたちをハラハラドキドキさせてくれます。また、こんな事もありました。学校が長期の休みになる時に「にこにこ」にやってくるダウン症のU君は、とにかくおじいちゃん、おばあちゃんが大好きです。U君も他の子どもたちと同様に、自分の気持ちを言葉や文字で十分に人には伝えることはできませんが、ある日ソファーに足をかけてくつろいでいるKさんに、突然「おじいちゃん、足じゃま」と言いました。一瞬、その場の雰囲気は緊張に包まれましたが、その時Kさんは、「そうか、そうか」とにこにこ笑って足を降ろし、その後、U君は、「おじいちゃん、握手」と言って手を差し出し、お互いがにこにこして握手をしました。
「にこにこ」にやって来る子どもたちは、その一つ一つの行動が何とも言えない雰囲気をつくり、その場を和ませてくれます。いろんな人たちがいて、いろんなコミュニケーションのとりかたがあって、それを受け入れてくれる地域社会がある。デイサービスセンターにこにこは、そんな地域作りにむけて、情報を発信し続けていきたいと思っています。
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